本格的な雨を覚悟して森に入ったが、時々小雨がぱらつく程度で、風はなく霧の森は優しく迎えてくれた。今日の目的は8ヶ月ぶりにあの巨大な屋久杉に合うこと。標高1200mまで上がっても、心配していた雪はまったく残っておらず、その杉は霧に包まれながら巨大なシルエットで立っていた。近寄って両手で抱くように杉を触り新年のあいさつをする。新年といっても木はわかるはずもなく、こちらが勝手に人間の慣習としてあいさつをしたまでのこと。ただ、植物は気温の変化で四季を感じ取れるのではないかと思う。落葉樹は秋に葉を落とし冬に備え、春になるとほぼ全ての植物は葉が新緑に変わり、一年の始まりを感じるのだと思う。巨大な屋久杉も寒さや暖かさを感じながら3000年もの間、ここに立っている。撮影が終わり、杉の前に立ちすくんでいた体は徐々に冷えてきて、木と一体になった感覚は、森に包みこまれたようで、嬉しくなった。