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凍てつく寒さ
北西の冷たい風がふきぬけ、カメラを持った手の指先は感覚がなくなっていた。
19日早朝、荒川登山口の気温は2℃。小雨が降るなか縄文杉をめざす。 まだ暗く底冷えするトロッコ道を歩いて行くと、小杉谷集落跡地ぐらいから小雨が雪に変わった。積もるほどではなくただ降るだけだった。 ウィルソン株を過ぎたころから、森の中は白い粉をふった程度の積雪があり、1cmも積もっていないが、木道や階段は少し滑りやすくなっていたので、登山靴に簡易アイゼンを付け、また歩いた。季節的に登山者は少なく、すれ違いもまばらで10:45には縄文杉に到着。
15分ぐらいたって近くの東屋で弁当を食べる時、リュックから温度計を出して自分が座っている長椅子の上に置いた。 そして弁当と一緒に持ってきたカップ麺にお湯を入れて待つこと3分。 麺が入ったカップを両手で持つと温かく、汁の匂いを含んだ湯気が顔にあたって食欲をそそる。 その温かい麺と汁を口に入れた瞬間「うまい!」と声が出てしまうほど、それはもう冷えた体には格別なものだった!。 至福を感じるとはこういう時なんだと思いながら、温度計に目をやると最高気温は1℃。 寒いはずだ!、風はあまり当たらなかったけれども深々と冷えている。 弁当を食べ終わってマグカップに温かいカフェオレを注いで、半分ぐらい飲んだあとカップを椅子に置き、東屋周辺で5分ぐらい写真を撮っただろうか、東屋に戻り再びカフェオレを飲むと、ホットカフェオレがアイスカフェオレになっていた。苦笑しながら残りを飲み干し、カップや弁当のごみなどをリュックに詰め、東屋から5分ほど歩いた所にある高塚小屋へ行ってみた。
温まった体で小屋に着くと、様相は一変した。北西の冷たい強風は顔を切るように谷をふきぬけ、まともに風を受けると涙が出るぐらい冷たい。 周りの木々には昨夜から今朝にかけて降ったであろう雪が、枝に霧氷という花を咲かせていた。 長さ3cm以内の霧氷は強風にゆれながら落ちもせず、びっしりついている。 手袋をはずしてポケットからコンパクトデジタルカメラを取り出し、木の枝を見上げながら「あいよ~、青空だったらなぁ~!」と嘆いた。せっかくきれいな白い霧氷が、灰色の雲で映えなかったからだ。 仕方なく撮影を始めて、10分もしないうちにカメラを持つ手の指先から、徐々に感覚がなくなっていくのがわかった。撮影する時はカメラのシャッター感覚を得るため、たとえコンパクトカメラでも素手で撮るのは冬であっても変わらない。それで5本の指先を片方ずつ交互に、開いた口に入れ、ハァーッと息で温めながら撮影を続けた。 このとき、ホッカイロを忘れて、持って来なかったことを…悔やんでも後の祭りだった。
撮影が終わって帰り際、小屋の近くの歩道横でひときわめだつヒメシャラの幹を、手の平で触ってみた。ふだんから冷たいヒメシャラは、氷を触っているのではないかと思えるぐらいひえきっていて、その冷たさは手から体のしんまで伝わってきた。これから2ヶ月余り寒さに耐えなければならない木々に、心の中で「頑張れよ!」とささやきながら、温もっていた体がまた冷えてきたので、足早に下山を始めた……。写真=19日、高塚小屋
照葉樹の森
昨日に続き照葉樹の森を歩いた。去年の教訓として猟友会の「鹿撃ち」には注意しながら、海岸から奥へと進む。
照葉樹の葉が生い茂る森は昼間でも薄暗いが、今日は一時的に陽が射し込む時があり、その光の先に目をやると、クワズ芋の葉が風に揺れ、ひときわ目立っていた。やはり光が入る場所には植物の命があることがわかる。
そのクワズ芋を撮り始めてまもなく、遠くからザーッと葉に当たる音が近づいて、弱い風と共に少量の雨が通りすぎた。曇り時々晴れ、たまに雨を繰り返す天気のようだ。濡れた葉には雫が残り、落ちることなくとどまっていた。
撮影を終えまた歩き出すと、冷たい風だけが顔に当たった。里山にも確実に冬が来ているのだなと感じる。誰もいない森は、風の音、雨の音、岸に打ち寄せる波の音だけで、鳥の声は聞こえない。
足元から樹の上まで見ながら歩くと、夏の台風が影響したのか、生樹がまるごと一本倒れていたり、枝だけもぎ取られたりと、自然の脅威を改めて認識しながら、森で起こる生と死をみつめ、そして写真で記録していく……。 つづく
屋久島写真










