時をみつめて

雲行き

s-IMG_8914昨夜降っていた雨は止んで、屋久島の東側は朝から晴れた。昼前、西部まで行く予定で車を走らせる。時期的にもうアオモジの花が咲いているかなと思い、安房から県道をしばらく走り、高平でハンドルを山手側にきって農道に入った。昨年も農道横で咲いていた花を撮ったので、今年も、と思い低速で走りながらアオモジの木を探した。木は10分もしないうちに見つけたものの、窓越しに枝を見ると、まだ蕾の状態で、開花まであと2週間ぐらいかかるかな、と思われるものばかりで、咲いていなかった。仕方なくまた車を走らせていると、道横につわぶきの綿毛がたくさんあることに気づいた。昨年、秋から初冬まで咲いていた黄色い花ビラは、全部落ちてしまい、丸い綿毛になっていた。進む先のちょっと広くなった道横に、つわぶきが群生して、綿毛が多く付いているものがあったので、その近くに車を停めた。カメラを手に持って車から降り、つわぶきの近くまで寄って、綿毛を見ていたら、風に吹かれて何本かが同じ風下に飛んだ。スーッっと速く飛んで行くのもあれば、ふわふわとゆっくり飛んで行くものもあった。風の強弱によって飛び方が違い、距離も違った。すべては風任せ。鳥や動物によって運ばれたものを除くと、あまり遠くまで飛ぶことがないのか、近くに着地して、発芽すると狭い範囲で殖えていくようだ。(それとは別に、土の中にある茎だけでも繁殖できると書物にはある)風が止むのを待って、きれいな綿毛を数カットだけカメラにおさめる。周りを見てもアオモジの木は無かったので、諦めて車に乗り込んでだ。農道はもうすぐ県道と合流する所まで来ていたこともあり、5分ぐらいで県道に出た。尾之間集落のAコープで買い物を済ませ、小島集落まで行くと、先日見たヒマワリが目の前に飛び込んでくる。冬だというのに季節はずれのヒマワリが、段々畑で咲き誇って、相変わらずきれいだ。先日も撮ったけど、また撮ってしまった。やはり撮らずにはいられない魅力があるかもしれない。しばらくたって、小島の隣にある平内集落まで行くと天気は一変。北西の風が小雨を連れてきた。空全体は灰色で低空に点在する薄黒い雲が、少しだけ速く北西から南東側に流れている。この雲が雨を降らせ、通りすぎるとぴたっと止んで、またくると降りだすという安定しない天気。県道沿いのお店で缶コーヒーを買おうと、自動販売機の前に車を止めて降りた瞬間、わずかに硫黄の臭いを鼻で感じた。近くに温泉があるはずもなく、なぜこの臭いがするのか、考えることも無くすぐにわかった。屋久島の西方12kmに位置する口永良部島(くちのえらぶじま:屋久島の一部)が昨年の8月、34年ぶりに噴火して、全国ニュースでも流され話題になった。地元でも大騒ぎになったが、今は治まっている。しかし、ある程度の噴煙(一概に言えない)がまだ出ているので、その噴煙が北西の風で運ばれ、屋久島の南西方面まで臭いをもたらしているというものだった。今まで冬にこの臭いを、北西の風が当たる所で感じることは無かったのに、今年初めて臭ったということは、噴火前に比べて噴煙が多くなったからではないかと思う。車は大川の滝を過ぎて、西部林道の幅員が狭くなった所で停め、降りてみるも雨で視界が悪く、撮影どころではない状態だった。急いで車に乗り込み、そこでUターンして走りながら口永良部島を見ると、島の上半分が雲に隠れて噴煙の流れは、わからなかった。時間は夕方近くになっていたので撮影は諦め、どこにも寄らずそのまま帰った。=30日、写真/モッチョム岳と雲、小島から

綿毛は風に乗って

s-DSCF5746秋から咲き始めたつわぶきの黄色い花は、綿毛(種)になって、風が吹くとタンポポみたいに飛んでいます。着地してうまくいけば春過ぎに発芽します。それとは別に、つわぶきは地下茎だけでも繁殖できるようです。

春の色

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s-IMG_8526どんよりとした曇り空の下、春の色を探しに南部まで車を走らせた。車道横では寒緋桜が満開で赤い色が写欲をそそる。車を停め10分ほど撮影。その後また車を走らせていると、道下の畑に面白いグラデーションを見つけた。色的に赤が欲しいなと思いながらシャッターを切る。そこから30分ぐらい走り小島集落まで来ると、畑は黄色が目立つ。冬なのにひまわりが満開。それも菜の花と混合に……。夏にひまわりの種を蒔くと冬に花が咲くそうで、温暖な南部だから見れる風景。今のところ春の色は黄色、赤、タンカンのオレンジ。=28日、高平、小島

満開の寒緋桜

s-IMG_8463里地では寒緋桜が満開です。
s-IMG_8440一部、寒桜も満開。

命ある限り

s-IMG_8383植物の種は落ちる(運ばれる)場所を選べません。落ちた所が運命の場所として、命ある限り生き続けます。苔があって雨が多い屋久島ならではの光景。

森、雑観

s-IMG_7719苔の上に枝ごと落ちていたノリウツギ(ゆきのした科)の花びら。8月に白く咲いたノリウツギの花びらは、花期が終わっても造花のようになって冬まで残ります。
s-IMG_7842小さい切り株の上で育つシキミの幼木。毒性があるため鹿に食べられることはない。

別の森へ

s-DSCF5396先日歩いた森とは違う、別の森に入った。ここも14年前入った森で、特別に変わった様子はなかったが、強いてあげると、立ち木や倒木に以前より苔が多く付いたような気がする。屋久島全体で共通して言える森の特徴だが、一つの例として「地表の下草が無くなって、苔の生え方が多くなっている」ことが上げられる(場所、気象条件も含めて)。それは、地表に育っていた植物、あるいは発芽してこれから育とうとしている植物を、2万頭近くいるといわれているヤク鹿が、好みの植物だけを食べ尽くしてしまった。その結果、下草が無くなり今残っているのは、嫌いなものや、毒性があるものだけになってしまったようだ。苔も食べているところをたまに見かけるが、どうも好みではないのか、そんなに多くは食べていなかった。そのため苔は生き延びて、繁殖を続けることができたのだろうと思う。学術調査によると屋久島で生息している苔は650種類が確認されているという。

その先に待っていたものとは

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s-DSCF5311低い尾根を越える前、ザァーっと水が流れる音が聞こえた。確か、小さい川があって、川のすぐ横には江戸時代に伐られた屋久杉(樹齢二千年ぐらい)の切り株が立っていて、当時67(ろくなな)という中判カメラ(フィルムはロール状でこのカメラで撮ると、ワンカットが名刺ぐらいの画像になる)で、何回も撮った記憶が蘇る。胸の高まりを抑えながら尾根を越え川に着くと、目を疑う光景がそこにあった。なんと、すでに伐られていた屋久杉の切り株が傾いて川の中にあったのだ。ありゃま~ぁ!。この状況から判断すると、川の横に切り株の状態で立っていて、大雨の時川が増水したために根元の土が削られ、流されたのだろう。あまり大きくなかったのであの切り株とは違っていた。川の中に入って写真を撮り上流を見ると、50mぐらい先に大きな木が川を半分塞ぐように横たわっていた。すぐに川の横の茂みを上りそこに着くと、大きなため息と失望感で言葉を無くした。大きさと場所からして、あの切り株だとすぐにわかった。切り株が倒れて川を塞いで、流されてきた大小の石と他の木が詰まって、防波堤のようになっていた。立っていた時は長かったであろう根は、幹の近くで切れて、雨で洗われたのか土は無くなっている。茶褐色と白くなった部分を見ていると、最初撮った時から歳月がだいぶ経ったのだと実感した。それと幹の中心部は、立っている時におそらく空洞(屋久杉の特徴)になっていたと思われ、倒れて今度は横に空いた穴に砂と小枝が半分近くまで溜まっていた。長靴を履いていたのですぐに岸から川に入り、15分ほど根と幹を撮影した。時計を見ると時間的にお昼を過ぎていたので、川岸に座りおにぎりをほおばる。食べながらその根を見て思った。撮っててよかった!。【すなわち、自然界は何が起きるかわからない。森で撮影した屋久杉が一年後には倒れていたり、岩が落ちていたり、トップページに掲載している屋久杉の残骸に水が流れているシーンは、川の中だったため、撮影した二年後に大雨の増水で流され、今はもう無い。人の命もまた然り、事態が起きた時《撮っててよかった!》と思うことが何年かに一回はあり、いかに記録が大事か……ということを痛感する。】おにぎりを食べ終わり、この森である程度撮ったのでどうしようか迷っていた時、空が怪しくなって今にも雨が降り出しそうになってきた。とりあえずこの場を離れて来た方向に歩き始めた。歩き始めて10分もしない内に北西の風が吹き始め、いっきに気温が下がり雨交じりのあられが頭を叩きだした。首に下げていた二台のカメラをリュックに入れ、急いで歩いていると、ちょっとした斜面で落ち葉が濡れていたため、足が滑り“すってんころりん”。尻餅をついてしまった。あぁ~、歳をとったなぁ~と思う瞬間だった。すぐに起き上がり、周りを見渡したが人が居るはずも無く、ヤク鹿が見ていたらおそらく笑われたな!と、鹿が笑うのを空想しながらまた急いで登山口まで駆け下りた。=この頁で終わり

その先へ

s-IMG_7684森の中は尾根筋だけ時々風が通るぐらいで、谷を歩いていると寒さは感じない。昼前になって灰色の空から陽射しが森の中に入るようになってきたので、陽が当たってる部分と、そうでない部分は、太陽の動きを見ながら雲に隠れるのを待って撮り分ける。(快晴で雲が無い日は、コントラストが強いため森の中は基本的に撮らない)森の中を先へ先へ進むと、見覚えのある光景が目に飛び込んできた。根っこごと倒れた杉。おそらく台風で倒れたと思われるこの杉は14年前、あまり苔は付いておらず、枝もかなり残っていたように思う。それが今、びっしり苔に覆われていて枝も少なくなっていた=写真。幹本体は脂分が多いためそのまま残っている。写真を撮り終え、次は何が出てくるかわくわくしながら前に進んだ。つづく

もう一度歩く

s-IMG_7417昨夜降ったまとまった雨も未明には止んだので、今日は14年前に撮影で入った森を歩いてみた。夜が明けてもまだ曇り空は続いていたため、森の中はちょっと薄暗く風が吹くと葉についていた雫が多少落ちてきた。苔はたっぷりと水が蓄えられているのか、深緑になって水滴がきらきらしている。14年前歩いたこの森の道は、江戸時代に使われていたと思われる山道で、石積みがうっすらとわかるぐらいだった。それが今ではその道を鹿がいつも歩いて踏み固めたように、はっきりとわかるようになっていた。(鹿は歩きやすい所をいつも歩く習性があるようだ)あの時は、森の中に江戸時代に伐られた屋久杉の残骸がたくさん転がっていて、苔に覆われていたのを覚えている。台風などで倒木があり、森はかなり荒れてしまっているだろうと思いながら入ってみると、意外とそれは無く、14年の歳月がたってもあまり変わっていない事に驚いた。ただ、屋久杉(土埋木)は木肌が見えないぐらい苔に覆われ、その上に14年前にはなかった別の木の新しい命が育っていた。つづく 写真=22日、苔に覆われた屋久杉土埋木

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